個人事業主として順調に稼げてくると必ず出てくるのが「そろそろ法人化したほうがいい?」という話題。でも調べ始めると「年収800万が目安」「社会保険で逆に損」「2年免税でお得」…と情報が混在し、結局、動くべきか判断できない— これが実情では?
法人化の損益分岐点は家族構成・申告方法・社会保険の切替で±200万円動きます。同じ年収800万円でも、単身30歳と子持ち45歳で結論が真逆になることも。以下、令和8年度(2026年)の最新税率・社会保険料率で、専門用語を義務教育レベルに翻訳して解説します。
💡 「年収800万円が目安」は半分ウソ
「800万が目安」の由来はシンプル。所得税は段階的に上がるのに対し、法人税はほぼ一定だから、ある所得を境に法人の方が税率で安くなる「逆転」が起きます。
📈 個人の所得税(累進)
5% → 10% → 20% → 23% → 33% → 40% → 45%
所得695万で23%、900万超で33% と階段状に上がる
🏢 法人税(ほぼ一定)
15%(所得800万以下) / 23.2%(800万超)
所得が増えても税率はほぼ変わらない
→ 所得800〜900万を超えると法人の方が税率で安くなるので「800万が目安」と言われます。
ただし、この単純計算は大事な3要素を無視しています。
配偶者・扶養控除
分岐点+数十〜100万
配偶者38万+扶養1人38万(大学生の子は63万)を課税所得から引ける。家族が多いほど個人のまま税負担を抑えられる。
青色申告65万円控除
分岐点+約65万
個人事業主限定の制度。法人化すると使えなくなる。今65万控除を受けている人は分岐点が上にズレる。
社会保険の会社負担
年+93万 追加負担
役員報酬50万/月で年約172万円(40〜64歳は約182万)。個人の国保+国民年金(単身・所得600万で約79万)との差は年約93万円。
この記事の立場
「法人化は所得 X 万円から得」という単純な答えは存在しません。あなたの家族構成・申告方法・年齢で答えが変わります。次のセクションから、税金以外の判断軸まで含めて整理していきます。
🎯 法人化を決める6つの判断軸
「税金」だけで判断すると失敗します。法人化は3つの軸で有利、3つの軸で不利という trade-off。6軸の合計で考えるのが正解です。赤タグが「ここでつまずく人が一番多い」最重要ポイント。
🟢 法人が有利な3軸
節税分岐点
所得1,000万超で顕著に有利
稼ぐほど個人の税率は上がる。会社の税率はほぼ一定。
所得税は5〜45%の累進。法人税は15%(所得800万以下)/23.2%(800万超)でほぼ定率。ただし単身・青色なら所得900万付近まで社会保険増で相殺され、1,000万超で差がハッキリ出てくる。
消費税・インボイス
新設2年 免税
会社を新しく作ると、最初の2年は消費税ナシ。
新設法人は資本金1,000万円未満なら、設立から2事業年度は消費税が免除(インボイス未登録時)。売上1,000万超のタイミングで法人成りすれば消費税2年分を節税できる。
信用・融資
銀行融資・法人取引で有利
銀行がお金を貸しやすくなる。大企業との取引も有利。
決算書が公的な形式になるため、銀行融資の審査が通りやすい。上場企業の多くは「法人としか取引しない」ルールがあり、案件獲得の前提になることも。
🟡 個人が有利な3軸
社会保険最重要
年+93万 追加負担
健康保険と年金が「高い方」に強制切替。
個人は国保+国民年金。法人になると役員報酬に対して健保9.85%+厚年18.3%の社会保険が労使合計で発生。役員報酬50万/月で年約172万円、同所得の個人時代(約79万)との差は年約93万円。法人化で一番つまずく罠。
設立・維持コスト
初期10〜25万 + 年7万〜
最初に10〜25万円、毎年7万円の固定費。
合同会社 約10万、株式会社 約25万の設立費用。赤字でも法人住民税の均等割 最低7万/年。税理士費用(年15〜40万)もほぼ必須。
事務負担
税理士費 年15〜40万
書類仕事が倍増。役員報酬も自由に変えられない。
決算・法人税申告・消費税申告・社会保険の算定基礎届など、手続きが倍以上。「定期同額給与」ルールで役員報酬は期首3ヶ月以内にしか変更不可。
参考: 国税庁 No.2260(所得税の税率)↗ / 国税庁 No.5759(法人税の税率)↗ / 協会けんぽ 令和8年度保険料額表↗
🧮 所得600 / 900 / 1,200万円で数値検証
上の6軸のうち「税」と「社会保険」は数字に落ちます。令和8年度の税率・社会保険料率で単身・青色申告65万円控除を前提に、個人のまま続けるvs法人化して役員報酬をもらうの年間負担を比較した結果が下の表。
| 所得 | 個人(税+ 国保+ 国民年金) | 法人(税+ 社会保険) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 所得600万 | 税 94万+ 保険 79万 = 173万 | 税 49万+ 社保 138万 = 187万 | 法人化で年14万円の損 |
| 所得900万 | 税 192万+ 保険 110万 = 302万 | 税 93万+ 社保 207万 = 300万 | ほぼ互角(年+2万) |
| 所得1,200万 | 税 304万+ 保険 131万 = 435万 | 税 170万+ 社保 242万 = 412万 | 法人化で年22万円の得 |
※ 概算値。役員報酬は所得の80% と仮定、残り20% を内部留保。家族構成・40歳以上・扶養人数で結果は大きく変わります。
👉 あなたの条件で試算してみる
上の3ケースはあくまで「単身・青色」の概算。配偶者の有無・扶養人数・40歳以上・青色申告の有無を入れると数字が大きく変わります。シミュレーターに実データを入れれば、自分の損益分岐点が一発でわかります。
※ シミュレーターはクリエイター向け6職種(動画/ライター/エンジニア/デザイナー/カメラマン/講師)に最適化されていますが、計算ロジックは全業種共通。飲食・物販など6職種以外の方は「その他」を選べば同じ判定ができます。
🗺️ 結局、私は法人化すべき? 3つの質問でチェック
ここまでの6軸と数値例を踏まえて、3つの質問に YES / NO で答えるだけで、今の自分に法人化が向いているか分かります。
※ 所得 900 万未満だと節税額が固定費(均等割 7 万+税理士費 15〜40 万)を下回り、年 30〜80 万の持ち出しリスクもあります。
🗣️ この記事とシミュレーターを作った理由
私も個人事業主3年目で年収1,000万を超えたとき、「法人化を」と勧められました。
でも紙と電卓で計算してみると、社会保険が個人時代の2.5倍に膨らみ、
手取りでは大して変わらないという結論に。
「節税メリット15選」のような煽り記事は多いのに、社保・均等割まで含めた総合比較がどこにもない。
だったら自分で作ろう、と開発したのがこのシミュレーターです。
🛠️ 関連ツール
本記事の内容を実務に落とすためのサクッとツール3つ。
免責事項: この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別のケースの税金・法人化判断を保証するものではありません。 実際の判断にあたっては、最新の国税庁・協会けんぽ・年金機構の情報を確認したり、必要に応じて税理士さんに相談してください。 記事中の数値・税率・保険料率は、令和8年度(2026年)の法令・料率にもとづいています(最終更新2026-04-03)。
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